TOEIC中級者向け(600~670点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法

 TOEIC600~670点のスコア帯の人は、基本的な文法や語彙の知識はあるものの、リスニングやリーディングにおいてスピードに苦戦し、700点の壁を越えられず伸び悩むことが多いであろう。
では700点を突破するには、どのような学習をすれば良いのか。今回の記事では、学会での論文の発表を続けながら、大学や企業向けに英語研修を提供している、鈴木武生氏に話を伺った。

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このスコア帯の人は高校レベルの文法を一通り理解し、さらにビジネス用語彙の基本を覚えたレベルと言える。英検2級の合格点平均はTOEICスコア527点なので2級のレベルはあるものの、英検準1級は(合格平均713点)まだ難しい。ただ25%くらいの人が合格している。

このスコア帯で問題になるのは、語彙力、特に複数の語彙が集まってひとつのフレーズのようになる連語(「興味がある」のbe interested inや「説明する」account for)がまだ不十分という点である。そのため、文章を読んだり、リスニングを行う場合、一つ一つの単語すべてに全神経を集中しなければならないため、理解速度が遅かったり、また集中力が切れやすくなる。

なぜ連語学習がよいのかについて説明する。これはちょうど電車の窓から見える風景に例えると分かりやすい。線路に近いもの、また架線の柱などは非常に速い速度で過ぎていくように見えるが遠くにある大きな山などはゆっくりと過ぎていくように見える。つまり小さな物は移動速度が速く、大きな物は移動速度が遅く認識される。これは言語も同様で、小さい単位で聞いたり読んだりしていると、情報の入力が非常にめまぐるしく、効率良く処理できないが、情報の入力単位が大きいと、それだけ大きいまとまりがワンステップで理解されるので、脳内の処理が楽になる。連語力の豊富さは、リスニングやリーディングだけでなく、ライティングの場合にも力を発揮する。つまり語彙を組み合わせる手間が減るためライティングの速度が格段に上がる。

次の問題は音声および会話パターンに対する不慣れである。まず音声に対する不慣れとは相手がナチュラルスピードでWhere did you go last weekend?と言った場合、文冒頭の"Where did you"という部分が一つのチャンク(塊)として発音されるため/wearddju/のように聞こえる。こうしたチャンクは会話では頻出するため、これが聞き取れないと会話がうまく行かない。TOEICパート2は、こうした5W1H疑問文が山のように出てくるので、これになれておかないとTOEIC600点代後半にはなかなか到達できない。

また会話パターンに対する不慣れとは、"What's up?"という挨拶があるが、直訳すると「何が起こったのか?」となるが、実際には「最近どう?」程度の意味で使われる。そのためこれに対して"Nothing much""Same as usual"という返答が使われる。このように会話にもパターンがあり、こうしたフレーズがとっさに出てくる練習をするだけでなく、さまざまな会話パターンに慣れる必要がある。

以上のような問題をもう一度下記に整理する。

(1)連語が足りない。
(2)チャンクが聞き取れない。
(3)会話頻出のフレーズが足りない。
(4)会話パターンに慣れていない。

まず(1)は自分で単語帳から暗記するのが正攻法だが、英検準一級用の語彙、文法、読解問題集などを用いて覚えるのが効率的である。1冊終えたら同類で別社から出されている問題集にも挑戦するとよい。

(2)については音読をおすすめする。NHKラジオ会話(「遠山顕の英会話楽学」など)を利用して、音源に合わせてまず数回音読し、次にテキストを見ずに音源の音をまねるシャドーイングを数か月続けるとリスニング力が大きく上がる。また(3)(4)NHKラジオ会話のスキットで学べるので一石二鳥である。チャンクだけのリスニング向上であればTOEICパート2の問題を使って音読とシャドーイングを実践するのもよいだろう。

さらにこれらで覚えた力を実践するために英会話教室に通うとさらに効果的である。予算がない場合は職場や学校に近い英会話カフェをネットで検索して定期的に足を運ぶのも一案である。

 

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鈴木 武生(すずき たけお)

元商社マンから日本語教師、翻訳者、通訳者、辞書編纂者を経て独立。東京大学大学院博士課程修了、Ph.D(言語学)。英日中の意味論、構文論、語用論。タイヤル語の文法記述
image-2株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。

https://asiaeuro.org/


「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人とコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したら良いのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか。」という思いで設立。代表として企業語学研修を中心とし、日系・外資を問わず、またあらゆる業種の企業に対し、学習者の語学力向上をサポート。