<グローバルリーダーのリアル①>大手デベロッパー中国法人責任者

多くの企業様が、海外法人で経営層を担える人材の育成に課題を感じています。「海外で活躍できる人材」「中核の仕事を担える人材」は、それまでにどんな経験を積み、どういう経緯で赴任し、実際赴任後には、どんな日常を過ごしているのでしょうか。

業種、業態ごとに状況は異なってきますが、海外で経営層の仕事を担う、日本人リーダー層のリアルを切り取りました。

<今回のグローバルリーダー>
S氏:大手デベロッパー中国法人責任者。グループ内で様々な業種・職種を経験した後、2年前に中国に赴任し中国内陸部の現地法人の総経理に着任した。

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Q: 海外赴任してからどれくらい経過しますか。

S:ちょうど丸2年になります。あっという間に2年が経過したという印象です。中国に赴任し、内陸部の都市に設立された現地法人の総経理(総経理は、中国の法人でいうと、責任者=社長クラス)に着任しました。

着任してからは、一言でいうと、怒涛の日々で、「日々何もないことがない」「日々必ず、何か発生して、毎日その対応をしている」といった状況です。

前例がないこととか、予測していなかった事が、とにかくたくさん発生するので、日本での経験や知識は、あまり役に立たないと感じています。

 

Q: では、必要になってくる力はどんな能力でしょうか。

S:一番必要だと感じるのは、「適応力」ですね。「適応力」そして、「折れない心」

日本でやっているようには、いかない。あらゆるものが違い過ぎますし、そもそも、考え方も違う。

ただ、そうした中でも、「必ず守るべきこと、守る所」があると考えています。「ここまでは、譲れないというポイント」ですね。しかし、ここは必ず守るというところも、それを覆される場面も実際あります。

そんな中で、「現実」とどう向き合って、「合わせていくのか」。理想とは異なる「現実」という前提で、モノゴトを考えて進めていく。こうした考え方をしないと何も進められないという感じです。「有るべき論をやりすぎない」ということが大切なように思いますね。

「こうあるべき」っていう理想が強すぎると上手くいかないように思います。

 

Q: 仕事の水準の基準はしっかりと示し、死守すべき所はしっかりと置きつつも、現実に合わせていく柔軟性が必要ということですね。こうした能力は、どのように身につけていきましたか。赴任前から、ある程度そうした強みは持っていたのでしょうか。

S: 私は、今の会社のプロパーじゃないというか、いろんな経験を経て、今の所に来ているので、逆にそれが、「こだわり過ぎることを防止して、ある程度柔軟な対応ができる力につながっていると感じます」

私は中途入社で、今の事業体についても、数年前までは、グループ会社で全く別のことをやっていました。同じグループ内で2~3年ごとに、全く違った業態で、違った職種を経験してきた形です。異動で、店舗系の仕事を3年、また、出向で買収された側の会社で1年ですね。この、買われた側の企業での経験は、貴重だったと思います。今後の世の中を考えたときに、企業は成功している会社ってほんの一部で、失敗する会社が圧倒的に多くなるはずです。そうなると、買収される側にもなることは多い。そういう時の人の行動や感情をリアルにみれたのはいい経験になりました。

前職はベンチャー企業で、社名を言っても名前が通じないという状況で仕事をとっていく大変さっていうのも身に染みて分かっているので、今、海外で大変でも恵まれていると感じています。

性格的な自分の特徴を言うと、新しいものが好きで、悪くいうと、飽きやすいという傾向はあるかもしれません。

 

Q: 御社の場合、総経理のような中核ポジションに着任する人が、中国の中で、一定数いらっしゃるかと思いますが、どんな傾向がある人が、総経理になっていますか?

 S:今の事業体については、一つ一つのプロジェクトごとに中国で会社設立する必要があるので、18の会社があり、総経理は18人いるのですが、全体傾向としては、柔軟性がある人が多いですね。 日本だと組織というものの枠の中で仕事をするという人がある程度のポジションにつくことが多いですが、こちらの場合は、「組織の中でやるというよりは、自分自身で、主体的にどんどん前に動いて仕事を解決していく力」が必須に思います。自分で何とかしないと、実際、誰も助けてくれないですね。やはり、変わった人が多いようにとは思います。

 あとは、ストレス耐性が高い人でないと、海外法人は務まらないように思います。

怒涛の日々を、ストレスと思うかどうか、ストレスと思うと、実際、今の自分の状態はすごいストレスだと思う人も多いように感じますが、実際の所、自分では、それをストレスだとは思っていないですね。

 

Q: 今、総経理の仕事をする上で、課題だと考えていることは?

S:日本だと当たり前にやってきたことが、なかなか伝わらないので、そこですね。

例えば、「お客様を喜ばせるにはどうしたらいいか」とか。

お客様を喜ばせる大切さから、理解してもらうようにする必要があるんですが、

どうやって、解決していこうかな、と考えていたのですが、行き着いた答えは、

「結局、部下は自分の姿が映っている。自分の鏡みたいなものかな」と。

お互いに相手のことを思わないと理解しあえないですし、自分の姿だと思って、大切なことを伝えていこうと考えています。

 

Q: 仕事は今、どれくらい忙しいでしょうか

S:実際仕事はすごく忙しいですね。毎日朝3時とか、そういう日々です。 

実際、会社自体は既に基盤ができてるので、手を抜こうとすると別にそれはできて、

自分が仮にいなくても、オペレーション自体は回る。

ただ、自分がここに居る「価値」をちゃんと出そうとすると、やはり、いろいろやり直す必要があって、それをすると、すごく時間がかかる。自分が考える「価値」が出せるように、実現し、かつ、自分が帰任などで居なくなったあとも、仕組みが継続するようにするには、時間がすごくかかります。

 

Q: 海外勤務をすることになった経緯を教えてください。

S:私達のグループは、けっこう手を上げると、機会くれる社風なので、自分で手を上げました。海外勤務を希望したのは、できあがっている所ではつまらないと考えたからです。

全部固まっている所では、自分はつまらないので、なるべく出来上がる前の何も無い所から関われる仕事をやりたいという思いがあります。そうした機会がある所は、新規事業となり、それが、たまたま海外だったので、海外赴任に手をあげました。

 

Q: 今の仕事をするにあたって、もう少し事前にやっておいたら良かったと思うことはありますか。

S:やはり、語学ですね。中国語です。コミュニケーションはつまるところ、それができないと始まらない。コミュニケーションとれることが、絶対に必要となる、ミニマムレベル。

中国語でのコミュニケーションがとれるという、ミニマムレベルをクリアしてこっちに来たら、もっと良かったです。

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海外での新規事業という特性もありますが、Sさんのインタビューからは、

海外の中核ポジションで働く人材には、「ストレス耐性」「柔軟性」「現実主義」

と共に、相手との相互理解(コミュニケーション)を重視する、「共に働く人への敬意を持つこと」が必要になることが感じられます。

「変化への強さ」×「共に働く人を理解し、共に成長しようという気概=温かみ」が、大切なようにインタビューを通じて感じました。

2018年9月インタビュー実施

インタビュワー
森谷 幸平<株式会社WizWe代表取締役社長>