<グローバルリーダーのリアル②> 企業事例に見る海外人材 (株)アルプス物流、YKK(株)

「グローバル人材の育成」というコトバが叫ばれるようになって久しい。

一方でこの分野で頭を悩ませていらっしゃる方々が多いこともまた確かである。

本稿では、テーマを「企業事例に見る海外人材」とし、
弊社森谷が実施し、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所に寄稿した
株式会社アルプス物流様と YKK 株式会社様への人材育成に関わるインタビューを共有させて頂く。

海外赴任者の役割と帰任後についてお伺いさせて頂いた。


倉庫写真2

アルプス物流様の場合

海外赴任者が任務を完了して日本に戻った際には、海外での経験を考慮しつつ、
その次の展開(次の海外赴任)も踏まえながら経験を積むよう配置される。
帰任後の日本でのポジションや仕事の内容は重要なポイントであり注意深く配置が検討される。
会社として海外経験者に対する期待値は大きい。

自社の主要顧客である電子部品業界のグローバル化がさらに加速する中で、国内と海外
が連動しながら実施していくサービスが非常に大切になっている。

この為、海外経験者は国内では「国内と海外をつなぐ物流サービスを提供する」=「グローバルワンチャンネルサービス」の担い手としても期待されている。

海外のビジネスのやり方や、現地のオペレーションも知っているため「国内と海外が一体となってサービス提供する」際に大きなプラスとなっている。

実務面以外の他にも海外赴任経験者は強い影響力があり大切な役割を担っている。
それは海外赴任についてのプラスのイメージづくりである。

次に続く者が「海外勤務はチャレンジングだけれど成功体験が積め、キャリアの糧になる」と思えるように、海外赴任経験者には、充実したキャリアを進む姿を見せてもらいたいと期待している。

海外経験者が赴任時の話を社員に話す場も設けており、こうした場で海外経験について
のポジティブな話を続けてもらいたいと思っている。

もちろん全員が成功して帰国して来る訳ではないができるだけその確率を上げていきたい。

その為にまず「人選」が大切になると考えている。

海外で成功できる素養がある人が赴任を経験できるよう、社員に年に 1 回個別のキャリア意識調査を行い、海外勤務にチャレンジしたいのかどうか聞き、適性も見ている。

さらに、できるだけ若い間に海外経験を積んでもらうことも鍵となると考えている。

自社でのキャリア意識調査によると海外勤務経験者は、約 7 割も再度海外へチャレンジし
たいと考えている(海外未経験者では約 5 割に留まる)。

そのうち 30%は、「是非ともまた海外で仕事したい」と回答し、一度海外を経験すると、
また行きたくなるという傾向が出ている。年齢が高くなるほど、海外にチャレンジしたいという希望が少なくなる傾向があるため若手の間の海外経験のデザインが鍵である。

今後も本人希望と適性を重視しながら、計画的に海外経験者を増やしていく。
現在の取り組みとしては、海外赴任者の後任候補は任期の 1 年前には選定されているようにし、
計画的な赴任を設計している。海外赴任候補者のプールも 3 年先の海外赴任を見越して、
3 年前から候補者のプールを作っている。

会社としては、海外経験者には大いに活躍してもらいたいと考えており、海外経験の母
数も増加させて行く予定である。事業部門と連携しながら、計画的な育成を行っていきた
い。


YKK様の場合

「土地っ子になれ」という言葉が示すように、海外赴任者には、その国で生まれ育った
と思い、その国の文化を尊重し、価値観を吸収し、その国の方々と一緒になって考えると
いう意識で任務にあたることを求めている。同時に現地法人の意思決定を尊重する風土が
ある。

その一方で、企業活動の根幹をなす「善の巡環」(=他人の利益を図らずして自らの繁栄
はない)という YKK 精神、経営理念およびコアバリューは必ずその国の人々と共有し、し
っかりと浸透するまで伝えている。

ファスニング事業における新卒は将来的に海外に行くことを 1 つの採用条件としており、
グローバル要員の候補である。

早くて入社 2~3 年、平均的には 3~5 年ほどの国内経験の後に海外赴任に出る。

1 カ国あたりの任期は明確ではないが、海外間異動も普通に行われているため、
長期海外経験者も多く、10 年を超える社員もいる。

赴任経験者は社内に多くいて海外経験は普通のこととして見なされており、海外赴任経
験者に帰任後、特別なキャリアプランが準備されている訳ではない。
帰国後は国内勤務者と同様に役割を担って仕事をしていく。


その一方で、海外経験が人の成長につながっていることは確かである。

海外では、『非常に速いスピードの環境変化に対応する』、『走りながら考え問題解決を続ける』
といったタフな経験を積むことが多い。結果的にこうした経験が人を大きく成長させている。

また、経営層の近くで仕事をすることも増えるので経営的な視点で、ものごとを鳥瞰す
る経験が積めることも多い。

会社の意思決定について「なぜこのような決断に至ったのか」という『途中の思考過程』も近くで見ることができ、これらは非常によい経験であると考えている。

こう考えると、赴任経験者が多いということは、異文化に適応し広い視野からものごと
を見る経験をした人間が社内に増えることにつながっており、多様な価値観を受け入れる
土壌の醸成につながっていると言える。

現在の海外赴任の動向について、新興国の急速な伸びに対応し、多くの赴任者が必要と
なっている。営業のポジションや、経営層、管理系ポジションのほか、特に必要とされて
いるのは技術系の赴任者である。

彼らは、主に技術指導等をミッションとして担うことが多い。海外では一般論としてナ
ショナルスタッフは日本よりも離職率が高い。

このため、ある程度のターンオーバーを前提とした上で、品質を担保し続ける必要があり、

その技術指導を赴任者が担っている。ファスニング技術については、何年か海外で赴任してから一度日本に帰任し、最新の技術を吸収した後に再度それらを現地に展開するため再赴任するケースもある。

これからも引き続き多くの海外赴任者が必要となってくる。手を上げて行きたいという
人には海外で働けるチャンスを提供する風土であり、高い目標に果敢にチャレンジして、
たとえ失敗しても、次に成功する糧につながるはずという、信じて任せるカルチャーがあ
る。

今後、若い人の海外に行きたいという気持ちをどれだけ盛り立て続けていけるかが一
つの鍵であると考えている。